【crimson_0003】退魔士ミコト2
姉のカグヤと違い、妹のミコトは天才ではなかった。少なくとも、ミコト本人はずっとそう考えてきたし、そう考えざるをえない十分な理由がった。退魔士養成校での敗北の記憶。偽りの首席卒業。同級生の退魔士【宝来ジュエ】に決闘で完全に負けたミコトは、それでも首席卒業の体面を保つのにある取引をする。ミコトはその取引によって、若く無垢だった体に快楽の味を叩きこまれ、マゾの種を植え付けられた。――二度と負けるわけにはいかない。――姉と並び立つために、自分が一番でなければならない。そう覚悟したミコトは、川澄家の先祖が太古に封印した幻獣の封印を解き放った。【摩伽羅】と呼ばれるその幻獣はミコトに憑依し、大きな力を与えた。並の退魔士が束になってもかなわない圧倒的な法術。知性と意志をもち、ミコトを助けるパートナー。しかし――すべてのものには代償がある。ミコトは力を得たかわりに、その肉体を摩伽羅によって弄ばれることになった。摩伽羅はミコトの体に快楽の味を覚えこませながら、その霊力と精神を喰らい、ゆっくりと成長を続けている。今はミコトを主人として慕い、従ってはいるが、幻獣とは本来人間よりも妖魔に近いもの。ミコトは摩伽羅から与えられる快楽をなんとか否定し、摩伽羅の意図を警戒してはいる。だが同時にミコトは摩伽羅の力に頼らざるを得ない。妖魔を調伏するために。特A級の退魔士でいるために。川澄家の家名を汚さないために。二度と敗北しないために。そして、何より――。――姉の隣に肩を並べるために。最強の退魔士でいるために……!
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